42年目、再会の夏。
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クラス会の会場に着いた時、すでに会は始まっていた。大広間を借り切っての宴の場には、見知らぬ年寄りが大勢集まっていて、幹事と思われる男が挨拶をしているところだった。受付で会費を払うと番号を書いた紙切れを渡された。何かゲームの時にでも使うのかと思ったら、単に座る席の番号だった。
テーブルに近づくと、かつてのクラスメートに違いないのだろうが、ジジイが一斉にこちらを見た。誰が誰やらまったく分からない。ただ一人、右側に座っている男には見覚えがあった。アタマの中で次第に名前が甦ってきた。「そうだ、竹上だ」。しかしながら甦ってきた文字は「竹上」でも、発音は「タケガミ」だった。少しムッとした顔でタケウエだとダメを出された。「上中」の時もウエナカと言って、それまで盛り上がっていた会話に水を差す始末だ。アタマが悪いのか勘違いなのか、自己嫌悪しきりであった。
(序文より)

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