もうずいぶんも前の話だが、天王寺公園にある大阪市立美術館の前は大阪市民のものだった。と言うか、新世界界隈で暮らす人々の憩いの場だった。美術館前の階段を下りるとそこに広場があり、そこから天王寺動物園の上を通って新世界まで真っ直ぐに広い道路が伸びていた。天気の良い日はさんさんと太陽の光が降り注いで、明るく気持ちのいい場所だった。
美術館下の広場では、休日になるとたこ焼きやお好み焼きの店なども出て、にぎやかな午後をつくり出していた。そしていつの頃からかよくは分からないが、ラジカセでのカラオケが始まったのだ。ラジカセはやがて小さいながらも本格的なカラオケマシンに姿を変え、歌好きの常連さんが少しずつ増えていった。
それから自然発生的にカラオケの歌をバックに踊り出す人(そのほとんどが新世界で生きるオカマさんたち)が現れた。土地柄か酔っぱらいも多く、飛び入り参加の人も多かった。

このために用意してきたと思える衣装に身を包んで日舞を披露する年季の入ったオカマさんもいて、普段の夜の生活とは縁遠いお天道さんの下でのパフォーマンスを楽しんでいた。 このゴキゲンな青空歌謡ショウは、天王寺動物園のリニューアル工事が始まるまで続いた。その後は天王寺公園横の道ばたに場所を変えることとなり、そして、いくつかのグループに分かれて、競い合うように青空歌謡ショウを繰り広げていた。

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