門をくぐり右手に向かうと玄関がある。お屋敷を見学に来た人たちは、当然ながらそちらに進んだ。左手を見ると庭への小さな入り口があった。扉は開け放たれていて、自由に出入りできるようだった。カメラを片手に庭に入るとその広さに驚いた。庭のことはよく分からないが、屋敷の庭とはこういうものだったのかと、改めてその美しさに感嘆した。とはいえ、荒れないように手入れはされているものの、泉水に水はなく、主のいない庭は生気を失っていた。森平蔵氏が暮らしていた頃の輝きには遠く及ばないであろうことは容易に想像できた。それにしても建物との調和といい、樹木の枝振りの見事さといい、さぞ名のある庭師が関わったのだろう。

元々が材木商でもある森平蔵氏は、その財力にものを言わせて日本全国から銘木を集めたそうである。それをこの屋敷を造るために隣接した地に設けた製材所に運び入れ、自分の目の届くところで納得のいく製材をしたのである。何という思い入れ、何というこだわりであろうか。きっと、大工や左官や庭師などと毎日のようにぶつかっては、大声でわめき、怒鳴り、そして納得の笑みをこぼしたに違いない。そうでなければ、80年の歳月を経た今でも当時のままに残すことなんてできないのだと思う。さらに言えば、その意志を継いでこの屋敷を残してきた人たちの努力にも頭が下がるのである。

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