ジャケ・エトワールはドイツの小さな時計メーカーである。スイス国境に近い小さな町の時計師が始めたブランドで、私にも手が届くくらいの時計を作っている。初めてジャケ・エトワールを目にしたのは1998年頃の時計雑誌で、バーゼルの時計ショウで面白い時計を作っている時計師がいるという紹介記事だった。クラウス・ヤコブという若い時計師で、その頃から注目を集め出していたオールド・ムーブをリファインした通好みの時計を試作的に作ってショウで展示していたのだ。

独自の出展ではなく、ミネルバのブースの片隅を借りて展示をしていたらしい。
そもそも私がオールド・ムーブに興味を持つようになったのは、ミネルバが出していたアビスという時計からだ。ヴィーナス製のムーブを使用したクロノグラフだった。ジャケ・エトワールのクラウス・ヤコブはミネルバと親交があるようで、オールド・ムーブを使った時計を作るようになったのもミネルバあればこそだと私は想像する。リファインのやり方もよく似ているのだ。

2001年、時計雑誌にジャケ・エトワールは大々的に広告を載せるようになった。輸入代理店がユーロ・パッションになったからなのだが、ヴィーナス175、バルジュー23、バルジュー88、ユニタス6497といったオールド・ムーブをリファインした時計を一斉に発表したのだ。オールド・ムーブだけに生産個数も1アイテムで60個程度の限定発売だった。このシルバーストーン23は、1960年代のバルジュー23をパーツ別に集めて組み立てたモデルで、比較的安価に抑えられていた。輸入代理店がユーロ・パッションでなければ、もっと安かったかも知れない。

バルジュー23はツー・カウンターのクロノグラフ・ムーブでは名機と言われている。その理由は、1940年代以降に作られた各メーカーの高級なクロノグラフに使用されたからなのだが、特にロレックスの初期型クロノグラフに使用されていたことが、評価を高くしている。結局、市場で人気の高いロレックスに使用されていた機械は評価が高いのだ。ヴィーナス175も、ブライトリングが長らく使っていたムーブということで、評価が高いのだろう。ともあれ、精度の面では不満が残るものの、ジャケ・エトワールのおかげでオールド・ムーブ搭載のクロノグラフを手に入れることができたことには感謝している。

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