ナマステ/ネパール顛末記

ハッチバン・リゾートの夜、レッサン・フィリリーな盛り上がり。

マウンテンフライトとともに大きな楽しみにしていたのが「ハッチバン・リゾート」である。ガイドブックにも載っていない隠れ家的なホテルらしいが、2日間カトマンズで過ごしてみて、あまりにもリゾートとは縁遠いネパール人感覚が多少気にはなっていた。

思えば、ホテル・バイシャリの客室の予想以上のショボさに、「リゾート」と名のつくハッチバンに大いなる期待を抱いてしまったのはけっして間違いではなかったはずである。何しろ2000メートルの高地、カトマンズ市街を見下ろしながら、ランタンやガネッシュといったヒマラヤの名峰を望める絶好のロケーション。涙の出るほどの心に滲みる景色と出会える場所にあるホテルなのだ。
丘の上に建つ遺跡のような古い町「キルティプル」を訪れた後、我々のクルマはダクシンカリに向かう幹線道路から脇道に入った。その道はハッチバン・リゾートの専用道とはいえ、とてもこの先にリゾートホテルがあるとは思えない山道で、スキー場のダウンヒルコースを逆に登っているような険しさだった。昇ること15分、クルマは美しい松林を切り拓いて建てられたホテルの駐車場に着いた。海抜2000メートル、さすがに空気が冷たい。

急斜面に張り出すように作られたデッキにはリゾートホテルらしい白いテーブルと椅子が並べられ、そこからはカトマンズ盆地全域が見渡せるようになっている。生憎その日は曇り気味だったし日暮れが近いせいもあって、見えるのはカトマンズ市街だけだった。ヒマラヤも雲の向こうに隠れたままだった。そんな景色を眺めながら「今日は仕方がないが明日が楽しみだ」。誰もがそう思った。
部屋の鍵を受け取って向かった先は、山荘をイメージさせるオシャレな平屋のコテージだった。庭先には小さな東屋までしつらえてある。さっそくそこで酒盛りが始まった。高岡氏がタメルで買い込んだヒマヤラウイスキーと水牛のジャーキーを部屋から持ってきたのだ。

どう言う訳か吉田氏はご機嫌で、昨夜の深酒がたたって少し元気のない武本氏に盛んにウイスキーをごり押ししながら、ダイナミックな笑い声を響かせていた。吉田氏のこの妙なハイテンションは、さらにパワーアップしながら夕食とその後の団欒へと続いていった。きっかけがよく分からないが、気づいたときには吉田氏、「レッサン・フィリリー」を歌い始めていた。食事の途中だった。それはダイニングから1階の暖炉の前に場所を変えても続き、デブさんや高岡氏のみならず、ホテルのスタッフまでも巻き込んでの「レッサン・フィリリー」大会にしてしまったのだ。すごいぞ、吉田一郎。

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